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第1章 ハザマの世界 3

ゴーン。


隣の部屋で鐘の音が響いているのが聞こえる。

この音が聞こえると、タックの胸はどうしようもない憂鬱な気持ちで締め付けられる。

「みんな軽傷であってほしいな」

タックは小さくつぶやいた。

「また気落ちしてるの?いつものことじゃないの」

部屋の隅で作業をしていたルーシーが、ため息混じりに振り返りながら言った。彼女はタックの相棒として長くペアを組んでいるため、彼の悲壮的な性格には慣れている様子だった。

「そうですけど…」

タックは力なく答えた。彼の視線は治療台へ向けられている。

「あなたが落ち込んでても仕方ないんだし」

ルーシーは、タックの肩を軽く叩いて励ますような仕草をしながら言葉を続けた。その声には明るさを装う軽さがあったが、どこか彼を気遣う温かみも感じられた。

タックは目を伏せ、短くうなずいた。

「次、ドリームモンスターが転送されてくるとしたら、この部屋なんだから、早く治療の準備をしよう」

ルーシーが治療道具を置いた棚を指さしながら言う。

「はい」

タックは深く息を吸い込み、頭を振って気を取り直した。そして、治療器具を手に取りながら、ルーシーの指示に従い準備を始めた。

タックとルーシーがいるこの世界は、現実世界と夢の世界の中間に位置し、住人たちはここを“ハザマの世界”と呼んでいる。この不思議な空間では、ドリームアーティファクトと呼ばれる存在の準備が進められている。

ドリームアーティファクトは大きく3つに分類される。獣として召喚されるドリームモンスター、武器として使用されるドリームウェポン、そして特殊な効果を持つドリームアイテム。それぞれがドリームパワーと呼ばれる夢の力を源として現実世界に召喚される。

ハザマの世界には、これらのドリームアーティファクトを扱うための特別な場所が存在する。まず、それぞれを生み出すための創造の間。次に、傷ついたアーティファクトの治療や修復を行う再生の間。そして、召喚と召喚の合間にアーティファクトを保管し、必要に応じて調整を行う休息の間だ。

この世界は、夢と現実を繋ぐ架け橋として機能しており、そこでタックとルーシーは日々の仕事をこなしている。

そして今も、数体のドリームモンスターが現実世界に召喚され、激しい戦いを繰り広げている。負傷したドリームモンスターたちは次々とこの再生の間に転送されてくるのだ。

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