第1章 ハザマの世界 4
ゴーンッ!
タックたちがいる第三分室に、鐘の音が鳴り渡った。タックの心には自然と緊張が走る。モンスターが転送されてくるまでに、治療の準備を整えなければならない。どんな傷を負っているのか、どんな痛みを抱えているのか―タックにとってそれは毎回不安を伴う瞬間だった。
「すぐにモンスターがここに来るはずだから、急ぐわよ。」
ルーシーはすばやく調合道具を取り出しながら、タックに声をかけた。彼女は、どんな症状にも対応できるよう、複数の治療薬を調合する準備をしている。ちなみに、これらの治療薬もドリームアイテムの一種で、現実世界では存在し得ない特殊な力を秘めている。
「はい、もう終わります」
タックは手を動かしながら短く答えた。その言葉とほぼ同時に、治療台が眩い光を放ち始める。
「プーニ…」
治療台に力ない声をあげながら転送されてきたのは、ひどいやけどを負ったドラプニだった。
「ひどいやけどね。まず消毒をして、それからスカークラを使いましょう。」
ルーシーが冷静に状況を見極め、指示を出す。スカークラ(Scarcura)は、切り傷や火傷などの外傷を瞬時に治癒する強力な塗り薬だが、その効果を発揮するためには、傷口が清潔である必要がある。
「わたしがスカークラを調合している間、火傷の周りを拭いて、しっかり消毒しておいて」
「わかりました」
タックは慎重にドラプニの傷を確認しながら、汚れを拭き取り、丁寧に消毒を進めた。スカークラが適切に使われれば、火傷はすぐに回復する。しかし、もし傷口が汚れていたり、菌が混じっていたりすれば逆効果になりかねない。そのため、タックは慎重に手を動かし続けた。
ドラプニは痛みに耐えながらも、タックに向かって微笑みかけてくる。その優しい眼差しには、『大丈夫だよ』と言わんばかりの気遣いが込められていた。
「ドラプニ、君は本当に強いね。痛いだろうに」
タックは思わず微笑み返しながら、優しい声で語りかける。
「もう少しだけ我慢して。すぐに治してあげるからね」